[コメント] あゝ!一軒家プロレス(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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これはあくまで結果としてなんですが、今作を語る上で「公開直後の橋本真也の急逝」というのは切っても切れないものとなってしまったように思います。本来であれば「ひゃっほう!バッカだなぁ!」と笑って終わらせる程度の映画となるはずが、良くも悪くも「橋本真也の物語」を少なからず背負ってしまった。
だから僕らプロレスファンは、橋本のアクションを見ては「この時は肩も心臓もだいぶ悪かったはずだ」と思い出し、ついその動きに感情を乗せてしまう。団体が経営難に陥った獅子王を見ては「現実でも同じだったんだなぁ」と胸を痛めてしまう(橋本真也の団体「ZERO-1」は2005年に経営破綻をしています)。とにもかくにも、そこかしこに橋本真也その人の人生が顔を出してしまうんです。だからバカ映画を観ているはずなのに、ところどころで何とも言えない気分になる。
また今作は「橋本真也が織田信長好きである」ということを強く前面に打ち出した映画でもあります。戦国武将の鎧をまとい、「人間五十年〜」の舞いと共に城攻めを開始する獅子王。そしてその獅子王を助けるサルゾウ(葛西純=ZERO-1の若手レスラー(当時))は、“猿”こと豊臣秀吉を意味しているのでしょう。自らの初主演作で信長になることができた橋本の喜びが伺えます。そしてこれはこれでまた何とも言えない気分になるんです。
ただそれらの結果として、今作は晩年暗いニュースの多かった橋本にとってはきっと楽しい仕事だったんだろうと思えるわけで、それはとても嬉しい話だなと思います。リングで久しく観られなかった橋本の戦いが観られたのも嬉しかったですし。あ、そうそう、ワイヤーアクションまでやってくれるとは思わなかった。というわけでかなり下品な成り立ちの下品な映画ではあるのですが、何となくそういう評価もしづらい不思議な映画になったみたいです。
以下は作品として思ったことを徒然と。
ソニンは彼女自身の持つ「しみったれたエロス」が作品に上手いことハマっていて良かったです。汗だくの橋本を噛むシーンなんてかなりの熱演ですし、着衣をはらりと脱ぎ去るところなんて、普通に「橋本いい仕事しやがって!」と熱くなってしまいました。
正道会館ニコラス・ペタスもその甘いマスクが見事に活かされていて好演。アクションも当然ながら見事に決まっており、このまま一本主演しちゃってもイケるんではないかと。
ただ残念だったのは悪役の半端さ。そもそも「先鋒」「次鋒」とか言いながら最初4試合しか組まれていないように見えるため、どこがゴールなのか判然としない。しかもその敵も戦いを追うごとにインチキ臭くなってくる始末で、副将の空飛ぶカンフー使いなんて何のために出てきたのかよく判りません。それだったら先鋒の現役レスラーザ・プレデターを副将に持ってくればよかったんだよ。プレデター倒してペタスだったらファンも納得です。
またこれは作品からははみ出す話ですが、製作しているソフト・オン・デマンドが「テンポを重視して作ったのでツッコミ不要」みたいなこと言ってるのも、いざっていう時の逃げ口上に思えます。お前らさぁ、橋本が真っ向勝負してんだから、自分たちだけ保険かけてんじゃねぇよ! いつ何時でも、誰の挑戦でも受けるのがプロレスラーだろ!
あと最後の城、あれを「一軒家」と言い張るのはいくらなんでも無茶が過ぎると思います。
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