コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 醜聞(1950/日)

これを見ると「日本の社会はこの半世紀以上の間、あんまり変わっていないなあ」としみじみと感じてしまう。「尊敬のない人気なんかいらないわ」−この台詞を、人気稼業にたずさわる人、そして人気を構成する人、すべてが肝に銘じるべきである。
シーチキン

雑誌社の社長の台詞を聞いていると、いまどきのマスコミの風潮と果たしてどれだけ違うのだろうかと嘆息してしまった。

同時にこの映画は黒澤明監督の観察眼というか、「画」によって人間性を描く、並外れた手腕が光る映画でもある。

最初の方の雑誌社の社員たち一人一人を描くショット、クリスマスの酒場で「蛍の光」を歌う人々を俯瞰するショット、病床の娘の枕元であさっての方を向いたまま、青江にもう来ないでくれと言う母親、いずれも短いショットであり、いってみれば端役に過ぎない人物であるが、そのショットに写された人の人間性、生き様までをも見るものに感じさせてしまう。

スクリーンに人間性を描くとはこういうことかとうならせる、まさしく黒澤監督の、映画の才能を思い知らされる一本と言える。

またマドンナ役をつとめた山口淑子の美しさも記憶に残る。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。