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[コメント] ロッキー3(1982/米)

文芸映画における過酷な真実追求の迷宮に疲弊した人々に、敢えてこの映画を捧げたい。ここには、あくまで素朴に人を感動させたいと願う、一人の表現者の姿がある。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『ゴッド・ファーザー』シリーズとこの『ロッキー』シリーズを同次元に考えているといったら、コアな映画ファンでなくとも失笑するだろう。前者の格調高さに比べ、後者は、そのボクシング・シーンを見ても、およそリアリズムとは程遠いように見える。

 だが、ここで、ロッキーに付けられたニックネームを思い出して欲しい。そう、“イタリアの種馬”。

 イタリア系であるスタローンによって綴られたこのシリーズの脚本は、徹底した娯楽精神の陰で、一つのテーマにこだわり続けた。言うまでも無く、それはファミリーである。

 冒頭などは、義兄ポーリーの義弟ロッキーに対する嫉妬から始まったりするが、そういったキャラクター一人一人の書き込みが極めて繊細なのだ。

 特に、このパート3では、ロッキーにとってのゴッド・ファーザーであるミッキーが最後を迎える。彼を失った瞬間のスタローンの演技にしろ、彼を殺した脚本のくだりにしろ、いかにスタローンが誠実にシリーズを作り上げようとしてきたかが伺える。また、妻の成長や、アポロが“ブラザー”となるくだりも、絶妙に描かれている。

 この家族のドラマという一点に限り、『ゴッド・ファーザー』とどこが違うというのか。

 この物語は、無骨だが繊細、そこに出てくる登場人物たちを素で語りたくなるような、確かなリアリティーを持っている。ボクシングとしては嘘でも、男が戦うドラマとしては本物なのだ。

 そして、そんな物語を生み出していたのは、理屈でも賢さでもない、純粋に人を感動させたいという素朴な情熱だったのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)ロボトミー ごう てべす KADAGIO[*] ペンクロフ[*]

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