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[コメント] ある子供(2005/ベルギー=仏)

野性の思考(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







追い込まれたときに見せる主人公の反射神経は、感心するほど素晴らしい。警察に追われて凍てつく川に入ってやりすごしたり、相棒の少年が凍えるととっさに靴下を脱がせて暖めたり、今まで彼はこの反射神経で生存してきたことを雄弁に物語るシーンだ。

だが、その代わりに彼は立ち止まって考えることをしない。だから、壁のどこまで上に足跡をつけられるかに熱中したり、盗みを繰り返したり、挙句の果てには自分の子を売ったり、愚かな行動を繰り返す。ただ、彼は常に動き回って目の前に起こった現象にだけ反応するため、自分の過去について後悔や反省をすることがない。

そんな彼が相棒の少年のことを慮り、自らの行動について後悔し反省をした結果、初めて責任を引き受ける。ラストの彼が見せた涙、冒頭の頃の彼が見せるはずもない涙。そして、主人公にずっと寄り添い動いていくことで、主人公の変化を映しとる野性のカメラ。「野性の哲学者」、キム・ギドクだけではなくダルデンヌ兄弟もそう呼びたい。(★3.5)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)煽尼采 ぽんしゅう[*]

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