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[コメント] どん底(1957/日)

「面白い嘘」を見事体現した左ト全さんが素晴らしい。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







何度挑戦しても途中で眠気に襲われてしまいなかなか進まなかったんですが、4度目の挑戦の時に、シャキっと座って改めて最初から見た。そうしたら今までの眠気は嘘みたいに、どんどん話に引き込まれて、結果、なんでこんな作品で眠くなってたんだろう私!って凄い事になっていた私。

しかしマルチカメラ方式っていうのは本当に凄いんだと実感。臨場感というのか、役者の気持ちが全く切れてないなーってのが完全ド素人の私にすら分かる。本当に舞台劇を見ている感覚でした。

それから音も非常に印象的。オープニングとエンディングの「音」も凄いインパクトだったし、咳や鍋磨きに、千秋実の引き笑い!(なんだか異常にツボだった)で、ドンドンツクドンドンツクドンでしょ。強烈すぎるわ!なんとも騒々しく、そして活き活きとしたあの薄汚い長屋は私にはキラッキラに輝いて見えました。

そこに左ト全さん。なんとも不思議なキャラでしたが、私には彼が幻のように思えました。本当にみんな見えてんの?誰か一人ぐらいは彼が見えてないんじゃないの?って思わず疑ってしまうような、なんともミステリアスな存在は、彼こそが「面白い嘘」そのものだったんじゃないかと思えてくるくらい。引き際も素晴らしく、別れのシーンなんか映さない。いつの間にかいなくなっているあの謎めき具合!

三船敏郎さんはちょっと存在感がありすぎて、彼が画面に映るたびその場がキリっと引き締まってしまう。せっかくのグダグダ感が彼によってピシっとなってしまったのが勿体無い。でも裏地がストライプのあの着物はとても粋で似合ってた。やっぱり三船さんはかっこいい。

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08.09.29 記

(評価:★5)

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