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[コメント] どん底(1957/日)

豪華俳優陣がまるで国会中継のように自説を滔々と述べて交わらず化学反応は起きない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







その典型は香川京子の造形だが、マレビト左卜全を除いて他の誰もがそうなのだ。そういう狙いなのだろうが、だからどうなのだろう。連中の愚かさを見せつけてどうだと云うのか。確かにどん底ですねとしか応えようがない。

例えば三好栄子のように孤独に死んでゆくことを倒錯的に肯定するような世界観があるなら壮絶だろうが、困ったことにそうでもない。どんちゃん騒ぎの件はいい感じなのにえらくあっさりしている。道具を葬儀のために売り飛ばしたはずの東野英治郎はいつの間にか鼓を直していたりする。その他どの人物も深掘りが足りない。印象に残ったのは唯一、根岸明美のホラに耳を傾ける左の件だ。「嘘も方便」という人生観が化学反応をもって浮かび上がっている。

冒頭、頭上の坊主どもがあばら家の屋根めがけて塵を落とすのだが、あばら家の住人がこれに何のリアクションも起こさないのはなぜだろう。映画的に美味しい処をなぜ描かないのか。マルチキャメラも『天国と地獄』などに比べてツナギが任意で落ち着かない。仰角のキャメラ、中村鴈治郎藤原釜足のメイクは素晴らしい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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