[コメント] 椿三十郎(1962/日)
無敵のチャンバラ映画!
黒澤という人はとにかく「綺麗な絵を撮る」ことにこだわりを持ち、またそれに長けた映画監督だったから、息を呑む映像で観る者を煙に巻く「難解な芸術映画」を撮らせたら、いくらでも撮れただろう。でも、黒澤のすごい所は、その「分かりやすさ」にあるんだよね。「俺の提供しているものは娯楽である」という認識を明確に持ち、如何に観客を楽しませるかという視点で作品を作っていることがよく分かる。
そういう意味で、この「椿三十郎」と前作『用心棒』は、映像へのこだわりは保ちながらも、最も娯楽=「楽しませること」に徹した作品であるといえるだろう。特に「三十郎」の方は、ユーモア・笑いもたっぷりで、数ある黒澤作品の中で、ここまで「笑わせてくれる」作品も珍しいくらいだ。
見どころも満載。加山雄三や平田昭彦など若侍たちの、頼りなげな若々しさ。今でこそビッグネームだが、当時売りだし中の仲代達也の奮闘ぶり。小川の水面を埋め尽くす椿の花々には、「映画はこうでなくちゃ」と拍手したくなるくらい嬉しい。そして何より、若い頃の暑苦しさが影を潜め、適度なギラギラ感と落ち着いた円熟味を漂わせる、三船敏郎の余裕あるたたずまい。
有名なラストシーンは、もちろん演技であるとはわかっちゃいるが、「一回こっきり」の緊迫感はこちらにも伝わってくる。この作品を黒澤映画の最高傑作と呼ぶのはちょっと語弊があるかもしれないが、まだ観てない人、ぜひ黒澤ワールドの真髄を堪能してほしい。
80点/100点(2000年11月6日記)
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