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[コメント] ホテル・ルワンダ(2004/伊=英=南アフリカ)

どうせ職務に忠実ならば、近所の子供をナタで切り刻む兵よりは、薄氷を渡る思いで孤児をもてなすホテルマンになりたいものだ。060316
しど

久々に怖い映画であった。敵は宇宙や外国から襲ってくるのではなく、隣人が敵となって襲い掛かってくるのだ。しかも、日常の延長で。

昔、アナキズムの「相互扶助論」を読んだ。進化論に合わせて、動物すら相互に助け合ってるのに、動物より進化している文明的人間が助け合えない訳がない、という面白い内容だった。ところが、動物から進化して欧州の文明人に解説が行き着く途中、猿と文明人との間にアフリカ人やアジア人が登場することに、ちょっと驚いたのである。猿以上人間未満、それが白人から見た有色人種の姿なのである。しかも、アナキストという「急進的知識人」にしてこうした認識。まあ、20世紀初頭の本だけどさ。

同じ地区内の民衆を対立させる分断統治とはそんな文明国家が編み出した最高の統治戦略である。人類の起源とされるアフリカは、ちょっとだけ文明に長けた民族によって今も陵辱され続けている。裏では『ロード・オブ・ウォー 史上最強の武器商人と呼ばれた男』が先進国政府とともに暗躍する。

この作品の主人公は、白人側の特権的な立場に居たことで少しだけ社会を俯瞰することができ、そして白人から預かった職場と知恵を最大限に生かして危機に立ち向かえたのだが、果たして私であれば、いざとなったときに何を頼りに戦えるのか、そもそも何と戦うのか、そんなことをツラツラと考えさせられる。

家族を守りたい、職務を全うしたい、というとってもシンプルで個人的な努力の積み重ねが、正義感など微塵も漂わせないすっとぼけた表情の主人公に、結果的に偉業を成し遂げさせたところがとってもかっこいー。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)FreeSize[*] プロキオン14[*]

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