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[コメント] 二階の他人(1961/日)

彼方からの手紙。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







松竹の同期大島渚から遅れること2年、56分のSPとして公開された山田洋次のデビュー作だが、鳩を売る少年の話をシリアスに描き「松竹ヌーベルヴァーグ」の名を遺した前者に対し、シリアスな設定の中にも適度な笑いを放り込み、脇を固めて主役を生かす、いい意味で松竹の叩き上げらしい手堅さに徹しているところなどには、もうすでに山田らしさが垣間見られて楽しい。

また、小津が好きな私としては、たびたび上京しては家族を混乱の渦に巻き込み、物語の顛末に大きな影響を与えていく博奕好きな母・高橋とよの圧倒的な存在感(すき焼きのシーンは爆笑!)も嬉しいポイントだった。

ちなみに、日銀発表の令和元年と昭和36年当時の消費者物価指数で比較してみると、当時の15000円は現在の79300円。日当たり良好の2階1間、夫婦で食事つきと考えるとなかなかの物件。

***

クライマックスが今ははるか彼方へと行かねばならなくなった2人からの手紙という形で締められているところを、のちの平尾昌章の代表曲になぞらえて考えてしまったのは私自身の単なる遊び心。許されたい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] 寒山拾得[*] ぽんしゅう[*]

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