[コメント] トム・ヤム・クン!(2005/タイ)
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この映画のアクションそれ自体はたいへんなものだ。しかしアクションに満足した上で観客が知りたいのは「トニー・ジャーはどういう人間なのか」ということだ。大衆はいつも「スター」の登場を渇望している。アクションが凄いだけでは優秀なスタントマンと変わらないのであって、トニーがタイ映画を背負って新時代の「スター」となるためには、ドラマに踏み込んでトニーだけの個性、人間的な魅力をはっきり見せるしかないのである。そしてトニーに決定的に欠けているのが、まさにこの部分なのである。
脚本の援護もあって前作『マッハ!!!!!!!!』よりは幾分マシになったものの、基本的には今回も彼は黙々と凄まじいアクションをこなすだけで、ほとんど感情移入できないようになっている。前作に続いて共演したペットターイ・ウォンカムラオが人情味溢れる警官を好演していたのに比べ、トニーは全然ダメだ。「うれしい」「かなしい」「いかり」の3つぐらいしか感情表現の引き出しがない。これじゃ肩入れできませんよ!
ラストの「タイ人は誰より平和を愛する民族。だが象を傷つけるやつは許さない」というナレーションが象徴的で、これは本当ならば「トニー・ジャーは誰より平和を愛するナイスガイ。だが象を傷つけるやつは許さない!」と言うべきだったのだ。そう言わせられなかったのは、トニーの感情の引き出しが少なすぎるという苦しい台所事情のせいである。スターへの道は険しいよ。でもたとえば昔のドニー・イェンなんかもこれに近い感じだったし、人気が出なくても腐らず地道に頑張ってほしいなあと、わりと本気で思っています。
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