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[コメント] ヨコハマメリー(2005/日)

街頭に立ち続けることに固執してきたメリーさんが姿を消したこと。それは、今の時代がもう彼女を必要としなくなったからなのかもしれない。[テアトル新宿]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画に登場するのは、多くが老齢の人物である。若者はほとんど出てこない。メリーさんを知らない、直接の関係がない若い世代にとって、彼女は単なるお化けか都市伝説のたぐいでしかないからだ。

一方で、メリーさんと深く関わった人々(その代表が永登元次郎氏である)にとって、彼女は自分たちが生きた時代を良くも悪くも代表するような存在であったはずだ。同じ時代を生きてきた仲間だからこそ、困っているメリーさんを支援したり、交流を持ったりして励ましている。いや、むしろ、もしかすると彼らのほうがメリーさんに励まされていた面もあったのかもしれない。高齢をおして街頭に立つメリーさんの姿を見れば、そう考えることも不思議ではないだろう。

しかしまた、彼らは現代がもはや自分たちの時代ではないことも知っている。元次郎氏は末期ガンに冒されており、往年の賑わいを誇ったチャブ屋は既になく、メリーさんが通ったクリーニング店も廃業してしまった。ゆっくりと、しかし確実に消えてなくなるかつての時代の残り香。“引退”を勧められたメリーさんがそれを受け入れたのも、「もう私の時代ではない」ことを悟っていたからではないか。

それでも、この映画はメリーさんや元次郎氏を決して過去のものとして否定しているわけではない。それは、彼らふたりがすでにこの世の人ではないことを伝えていないことからもわかる。ガンを患っていた元次郎氏は2004年3月に、メリーさんも一般公開に先立つ2005年1月に亡くなっており、作品の完成後ではあるものの、冒頭なりエンドクレジットなりに、その事実を知らせるテロップ1枚くらいは入れることはできたはずである。しかし敢えてそれをしなかったがゆえに、メリーさんはいつまでもこの映画の中で生き、元次郎氏はいつまでも歌い続けることができるのだ。

メリーさんや元次郎氏がいて、今の自分が存在する。それを理解している若き監督は、人間に対して、人生に対して実に真摯に向き合っていると思うのである。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)づん[*] 林田乃丞[*] ぽんしゅう[*]

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