[コメント] 早春(1956/日)
東京を舞台にした日本映画を23区や市で分類すると、どこが一番よく撮られているのだろう。この映画はまさに大田区映画です。大井武蔵野館でこの映画を見ると「地続き」感がたっぷり味わえた。
再見しました:
例外もあるが、サラリーマンが主役の作品になると、蒲田、も少し広げて大田区が軸になるのは、小津映画の特徴である。「生まれてはみたけれど」と本作が明らかにこれにあたる。(喜八ものだと江東区近辺というようにエリアと主人公の階層が密接にかかわる)
さて、再見したこの映画で一番びっくりしたのは、照明の陰影の深さ。あえて逆光になるようなショットを含めて、順光でないシーンが多い。サラリーマンものなので、ユーモアを感じさせるシーンも含まれているのだが、そういう印象があまり感じられないのは、光がフラットにあたらず、登場人物が性格の面まで影を持っているような感じを強くもってしまうからだ。そしてそういうシーンはおうおうにして他の作品以上にシリアスになってしまっている。しかし、そのためにかえってシーンごとのちぐはぐ感が生じてしまった。
小津映画にとってユーモアや皮肉が本質的に重要な要素だということがよく分かる反面教師的作品である。
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