[コメント] 早春(1956/日)
デジタル修復版にて再鑑賞。記憶に残っていたよりも暗い印象。表面的には仲よさそうにしながら、嫉妬だったりエゴだったり、人間のちょっと嫌な側面を底意地悪く描いている感じ。
戦友が酔っ払って深夜に押しかけてくる場面が実に面白い。冷静に対応しながら腹わた煮えくり返った淡島千景、すっとぼけて鈍さ丸出しの加東大介と三井弘次、諦めと開き直りしかないだらしのない池部良。それにしても謎なのは岸恵子のキャラクタで、あんな美人にあんな風に迫られたらよろめくのも無理ないが、幾ら何でも言動が支離滅裂。
いろいろあっても何となく大団円に持っていくのは小津のいつもの手口だが、例えば『お茶漬の味』に比べても、本作はちょっと強引かな。
そんな中、清濁併せ呑んだ浦辺粂子演じる母親がいい味出してた。「おでん持ってくかい。とってもおいしいんだよー」ってホント美味しそう。
それにしても、「通勤電車仲間」という設定が現代ではひどく珍妙なものに思えてしまう。だけど今だって、毎日通勤電車で顔を合わせる人たちと、仲良くならないまでも挨拶くらいしたっていいのに、絶対そんなことしない。ちょっと出かける時に近所に鍵を預けたり、うどんパーティのどんぶりが足りなきゃアパートの隣の部屋に借りに行ったり、別にしたって構わないのに。日本人はいつからそういうことしなくなっちゃったのだろうね。
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