[コメント] お早よう(1959/日)
全面的なオープンセットの使用によって、小津の幾何学的な空間構築はここで頂点を極める。
本当に云いたいことは「無駄な」言葉の裏に隠され、オナラが言語の代替を果たす。喜劇的な機能を託されたものとしてではあるが、親子間・近所間のコミュニケーションの齟齬も描かれている。大袈裟に云えば小津流のコミュニケーション論なのかもしれないが、これは小津のフィルモグラフィにおいて最も「バカ」という台詞が頻出する作品であるという事実が端的に示しているように、まず何より「バカな」映画として楽しめる。
ところで、小津の映画には妙に真似したくなってしまう台詞が多い。たとえば『晩春』の笠智衆の「そーかね」や『東京物語』の東山千栄子の「あーりがぁと」などがそれで、この『お早よう』の勇=島津雅彦の「知らないよぉ」「云わないよぉ」「僕じゃないよぉ」も、つい意味もなく真似したくなる。
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