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[コメント] 祇園囃子(1953/日)

性奴隷の哀歌 もしくは 女優は何処へ行った?
ボイス母

「日本を代表する、生きた芸術品」なんておだてられていても、結局は、自分が望んだワケでもないセックスのご奉仕もやらねばならない義理と人情のお仕事「芸妓」

その仕事(と世界)に生き、その非人間的な仕打ちを受けながらも静かに(でもナイ部分もあるが)自分を貫こうとする弱くて強くて美しい女が二人。

「このバタ臭い木暮三千代が芸者!?」と最初は違和感を感じたが、途中からは、さすが、若尾文子演ずる現代っ子の「アプレ芸者」(当時の流行語「アプレゲール」をもじった命名)の姉貴分を演じるには彼女しかイナイと思い至る。

この色気、この芯の強さ。長年苦界に身を置いてそれでも旦那も持たずに自分の芸一本で身を立ててきた年増芸者の心意気が見事に表現されていた。

そして、コナタ文子タンこと若尾文子の立ち振る舞いの素晴らしいこと! 当時19歳の彼女は必死に芸に打ち込み、精進する舞妓見習いの姿を自信の姿を重ねるように熱演している。 踊りに三味線、鼓に鐘太鼓。 もちろん姉さんの身の回りの世話や掃除もこなし、女として一人前になるために必死に(それこそスポコンドラマの勢いで)立ち働く。

このチョットした所作の美しさ。芸に打ち込む演技の一挙手一投足。 これだけ演じられる19歳の女優は今の日本にはもういないであろう。

女優が真に「女」であった時代。 演技者として全身全霊を捧げていた時代。 そんな時代もあったという一つの証言映画にもなっている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)irodori けにろん[*] きわ[*] picolax 若尾好き[*]

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