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[コメント] 太陽(2005/露=伊=仏=スイス)

これが精一杯だろう。・・・「あっそう」
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







昭和天皇のことについて本当に突っ込んだ史実に基づく映画や書籍が世間に行き渡るのはもっと先のことだろう。もしかしたら、私達が生きている間に、その重たい歴史の真実、特に第二次世界大戦期の真実を知ることは不可能かもしれない。それはまるでケネディ大統領暗殺の史実を76年間公表されないことに重なることなのかもしれない。きっとそれは、歴史を同じくした者に対する配慮であろう。

この映画の昭和天皇は実はお茶目で、学者で、詩人である。だから映画の中で戦争責任がどうとかいうことは語られることがない。マッカーサーとのやりとりで真珠湾攻撃について否定的な発言をしたことが唯一の政治的な発言といえるかもしれない。

昭和天皇の性格とか人柄がとても良く描かれている映画だが、御前会議の場で天皇が語る抽象的な発言は臨場感にあふれている。映画の前半、日本の政局に暗雲立ち込める頃の御前会議で、天皇が抽象的な発言を繰り出すシーンは滑稽だ。それはまるで、自分の決断ではないということを訴えるように見える。本人の責任リスクを回避するために自分の知りうる知性は精一杯使って、その場を取り繕うような印象だ。

この点に関してはヒトラーとは違う。彼は政治家であった。従って自ずから求めようとする意思を徹底して進もうとする。そしてそれが失敗だとわかっていても後退することがない。だから最後の最後に自らが追い詰められれば、死を覚悟していることがうかがえる。

天皇は違う。天皇の抱える責任とプレッシャーは、当時のことを考えれば、滑稽にも写るこの抽象的な発言の数々は、まさに天皇家を守ろうとする意思の表れなのである。あらためてそう思わせてくれる映画だった。

マッカーサーとのやりとりがこの映画のクライマックスだが、この会談を終えて皇后と再会するシーンでこの映画は終わる。このラストは非常に印象的だ。天皇が侍従に録音技師のことを尋ねる。侍従は彼が自決したこを報告する。天皇は「それを止めたか?」と聞く、侍従は小さく「いえ」と答えて終わる。

この時の皇后(『桃井かおり』)の見事な表情、演技、目線。素晴らしいシーンだった。彼女の目線が天皇をにらむ、その光に満ちた憎悪の表情は、この映画の全てを物語っている。

ところでこの映画がロシア人の映画監督により作られたことに喜びと複雑な感情を覚える。日本でこの映画を作ることはできない。天皇制が続いている以上、この映画を日本で製作することは不可能だろう。

ただ、同じ日本人として、第二次世界大戦について昭和天皇の立場や心情などが語られる機会は必要と思う。天皇の責任ということではなく、きっとこのとき最も大きなストレスの中で、日本人のために重大な決断を迫られた昭和天皇について語られる機会はあっても良いと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] sawa:38[*]

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