[コメント] 山椒大夫(1954/日)
こんな陰惨な話、観たことない。ビックリした。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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恥ずかしながら、溝口作品を初めてスクリーンで観た。 ビックリした。 テレビサイズの画面で観る映画じゃなかった。 ものすごく完成度の高い画面だ。 昭和29年の映画だろ、これ。今の方が後退してるじゃないか。 同じ年に『七人の侍』や『ゴジラ』があったことを考えると、この頃の方が映画黄金期だったのかもしれない。
ここから先、思いっきりネタバレについて書くので、なるべくぼかしますが、それでも未見の人は読まないことをお勧めします。
「お母さん、厨子王ですよ」というシーンがあります。 ここでもう充分、涙ながらの再会、感動的なシーンにしていい場面です。 ところが「また騙そうとしている」みたいな言葉が返ってきます。 厨子王はビックリします。観ているこっちもビックリします。 そういう言葉が出るということは、「そういう目に遭ってきた」ということの裏返しなのです。 これはすごい台詞だと思うんですね。 一つの台詞で、画面上に描かれない背景を語り尽くしている。 見た目にもかなり酷い状況なのに「そんなことまであったのか!」と思わせる。 いやもう悲惨。陰惨。酷い。サディスティック溝口、酷すぎる。
こうした脚本の完成度、画面の完成度、何をとっても「映画のクオリティの何たるか」を教えてくれる映画だと思うのです。 昭和29年の映画なのに。 いや、『七人の侍』『ゴジラ』も生み出した昭和29年こそ、日本映画の全盛期だったのかもしれない。
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