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[コメント] グエムル 漢江の怪物(2006/韓国)

日常の中に埋没することを誰が責められようか。物哀しいが,それぞれの個人の幸福の形をそこに見た。
uswing

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







守られるべき弱い存在の少女が,更に弱い者を守り抜いたとはいえ,あんなにいい少女が,汚辱にまみれて生き続けた少女が,最後の最後で死んでしまうことが衝撃だった。

救いがない。。。

少女の父は,彼女の死を追悼したのだろうけど,最後のシーンで,自分の父と娘を殺した存在についての事件にさしたる関心もなくテレビを消してしまって,どこぞの少年と飯を食らい続ける。

愚鈍,その一言で片付けるにはあまりに報われない。

自分の父と娘が不合理に,そして無駄に殺された事を憤り,それに抗議するのが通常の精神構造だと思うが,そういったエネルギーの必要な行為は,他人が求めるものではないんだろう。

どのような事件が起きようと,いずれ人は日常に戻り,従前の生活を続けていくものなのかもしれない。少女の父は,縁で一緒に生活することになった少年とささやかに生活しており,少なくとも,食欲を満たしているあのシーンでは幸せなんだろうと思った。そして,彼らにとっては,それで十分なんだろう。

よく言えば「足るを知る」にあたるのかもしれないが,あまりに空虚で物悲しい。

最後の食事のシーンを見て,いい意味で,ラース・フォン・トリアーの「ドッグ・ヴィル」に通じる人間の悪意を感じた。

良い監督を知った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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