[コメント] ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT(2006/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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今までの人生を振り返って「滑ったな」と感じた経験はないだろうか。口が滑ったり、手が滑ったり、滑ったコメントを書いたりと、人は人生でよく滑り、時には道からはみ出し、時には壁に激突する。人生に滑った時、ハンドルを逆に当てることで、人生を立て直せたらどんなに素晴らしいだろう。そう、この映画はトラブルを起こし、人生に滑ってしまった主人公が、自分をコントロールする術を学び立ち直るという成長の物語だ。主人公がカーブを曲がれなかったり、壁にぶつかったりするのはすべて人生の暗喩であり、そんな主人公が何度もカウンターを当て、必死に自分自身をコントロールしようとする姿は感動的であり、涙なしには見られない。
この映画の主人公は言ってみればアメリカで横滑りし、日本まで滑ってくる高校生だ。そんな設定からして既におかしいだけに、日本の描写もどこかズレている。しかしこれはすべて演出なのだ。「なんかヘンだ」と思った時、観客は無意識に脳内で逆ハンを当てている。そうして観客にもカウンターを体験させることで、主人公と一体感を感じさせることに成功しているのだ。見終って、細かいストーリーをまったく思い出せないのも、物語自体が滑っている証拠であり、滑りというものに対して作品全体がいかに調和しているかがわかるのである。
この映画が他のバカ映画と違うのは、あきらかにズレてる描写であっても、それがすべてドリフトに結びつくという点だ。滑る=ドリフトという公式が成り立つため、この映画に関してはどの場面であっても「いや、これはドリフトの映画ですから」の一言で納得せざるを得ない説得力を持っているのだ。
なんだかこのコメント自体も滑ってしまったような気がしてきた。しかしそれさえもこの映画にはふさわしいのかもしれない。
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