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[コメント] 父親たちの星条旗(2006/米)

「誰」が生き残り「誰」が死ぬかはまったくの偶然に過ぎないが、少なくない「誰か」は必ず死ぬという戦争の当たり前の真実を淡々と描いているようにも見える。そしてそれだけに生死の境がより鮮明に感じられた。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







硫黄島に星条旗を立てた6人の兵士のうち生き残った3人が本国へ呼び戻されて戦時国債販売キャンペーンのマスコットに仕立て上げられるという、なんとも生臭い映画。

将棋でも、序盤のうちは歩一枚といえども自分の駒は極力大切にし、相手に取られないように慎重にさすが、戦局がすすむとある時点からそれまでの自分の駒を大事にしていたのが嘘のように、どれだけ駒をとられてもいいから、先に相手の玉を詰ますことだけが大事で、相手の駒を詰ますのに必要最小限の駒(場合によっては自玉以外には1枚あればよい時もある)さえあれば残りは全部取られてもかまわない指し方に変わらざるを得なくなる。

この硫黄島の戦闘にしても、司令部の作戦立案では必要な戦力を硫黄島近辺に集めるまでは、一人たりとも死んでもらっては困ると思っているのだろうが、いざ戦闘がはじまってしまえば、ある程度兵士が死ぬのは当たり前であって、むしろ死ぬことを前提に、何人死ぬ間に、或は何人死ねば上陸のための橋頭堡を築けるかを考えているのだろうなあ、と映画を見ながら漠然と考えた。

そういう戦争の中でたまたま生き残ったから英雄だと言われても本人たちにはピンとこないということじゃないだろうか。

この点では『プライベート・ライアン』とも似ているが、今度は生き残った故に、本国での戦争参加=総力戦のための士気高揚と戦費調達を命ぜられた分だけ、生死の境がより極端に表れたような気もする。

あと、イギーの最後がちょっと気になったが、この映画では最後まで明かされなかった。ひょっとして2作目の『硫黄島からの手紙』の前宣伝のために、明かさなかったんじゃないかという気がした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)りかちゅ[*] 狸の尻尾[*] 甘崎庵[*]

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