コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 麦の穂をゆらす風(2006/英=アイルランド=独=伊=スペイン=仏)

冒頭の英軍の急襲シーンでも鮮やかに示されているが、アイルランドとイギリスの対立は言語の対立でもある。類稀な「声」の持ち主としてのキリアン・マーフィが主人公を担うのはその意味できわめて正当である。
3819695

ケン・ローチは決して映画的な天才の持ち主ではない。また「映画で語ること」よりも「政治を語ること」を上位に置くようなローチの態度がしばしば私に疑問を抱かせるのも事実だ。だが、「政治を語ること」に対するここでのローチの執念は尋常ではない。風景の撮影や自転車などの小道具の使い方の巧みさといったこの作品の技術的な美点は、すべてその執念に端を発している。「映画にのみ可能な表現(面白さ)を追求しているか」という観点からすれば最高の評価を与えることはできないこの『麦の穂をゆらす風』が私の胸を打ってやまないのもその執念の強さのためだ。

ここには間違いなくローチの「声」がある。それはマーフィの「声」に仮託されて私たちの耳に届くだろう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)DSCH jollyjoker[*] Lostie[*] 緑雨[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。