[コメント] バベル(2006/仏=米=メキシコ)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
設定は面白いし、役者の上手さも演出も非常に冴え渡った作品ではある。2時間半の長丁場をダレ場無しで見せきる技術もたいしたもの。質そのものはかなり高いのだ。
ただ、私にとってはどうにも何かしっくり来ない作品だった。かつてイニャリトゥ監督の前作『21グラム』(2003)のレビューで「確かに好みのはずなんだが、なんだか入り込めない」と書いたが、本作も全く同じ。良い作品だし、好みの素材を使っているのだが、やっぱり入り込めないまま。『21グラム』をそのままワールドワイドにしただけと言う感じか?あの作品を楽しめる人には本作は楽しめるのだろうけど、はまれなかった私には全然駄目。それでも本作は飽きなかっただけ良かったのかな?『バベル』という表題も活かされなかったのも『21グラム』と同じ。
何より世界を舞台にしているのに、その関わりがあまりにも希薄な上に、顔を合わすシーンが全然無いため、たんなるオムニバス映画にしか見えない。モロッコとメキシコはそれでも多少は関わりがあるんだが、日本編はもうちょっと関わり持たせて欲しかったよ。あの話の中では完全に浮いてる。
ちょっとした話題になっている劇中のフラッシュシーンだが、確かにアレはきつい。光りの明暗のみならず、音が突然とぎれたり大音響になったりして、かなり脳にダメージを与えそう。途中から目が痛くなったので、あのシーンは途中から目をつぶった。大体あんなシーンを長時間流す意味も私には分からない。
ところで本作観ているといくつもの疑問がわき起こる。
冒頭。初めて銃を持たされた少年がいとも簡単に銃を扱えるのは才能としても、普通車を撃とうとするか?全くもの分からないのでなく、すぐさまやばいことに気付くくらいだから、責任能力はあるはずだろ?
メキシコ編で国境でパトカーをまいたはずなのに、子供達を砂漠に放り出してわざわざ戻っていく意味は?
モロッコ編。狙撃され生死の境をさまよっていたブランシェット。劇中「壊死」という言葉が何度も出てくるけど、後で日本で映ったテレビでは普通に歩いてた。そんな短期間に治るものなのか?
日本編。「ここってオマワリ回ってくる?」と言いつつクスリを服用する高校生(?)達。クスリ以前に真っ昼間からウイスキーこれ見よがえしに呷っておいて、そりゃないもんだ。大体サイレン鳴ってるのに頓着しないのは、何のための用心?。それと最後に役所広司が「何か問題でも?」って、大問題だよ。銃を人にやっておいて、その発言はあまりにも無責任すぎ。いや、それ以前にこういう場合の銃ってちゃんと登録しているんだから、人にあげた時点で責任取らされるものじゃないの?
細かい気もするけど、その辺が全部見事なほどに気になるってことは、それだけ私が画面に集中できなかったって事。
それと最も残念なのが日本の描かれ方。日本を良く描けと言うつもりは全くないけど、一番外国に紹介されたくない部分を全面に出された感じ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。