コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ツォツィ(2005/英=南アフリカ)

おそらくこの監督は音に関心がないのだろう。音の演出がいいかげんだ。しかし画はなかなか見せてくれる。
3819695

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







音楽がどうしようもなくダサいなあ、と感じるのは私個人の感性の問題だとしても、やはりシーンと音楽が釣り合っていない箇所が多かったのではないだろうか。音楽以外の音に関しても、たとえば携帯用防犯ブザーの音はもっとけたたましく鳴らなければいけないはずだし、家に連れ帰った赤ん坊が初めて泣いたときの泣き声はもっと耳障りでなければならないはずだ(これはあくまで演出上の問題で、「リアルかどうか」とは別の話です)。ほかにも拳銃の発砲音や顔面を殴打する音には改善の余地があったと思う。

しかしながらショットについてはなかなかよいものが多く、特に強盗に押し入った家の子供部屋に佇んでいる主人公の背中をとらえたショットは、薄汚れた不良少年と綺麗で豪勢な子供部屋(家具や玩具を含む)という不調和に加え、幾何学的でさえある構図が非現実感を引き出していて印象深い。また彼が赤ん坊を元の家に返しに行く道中のショットはどれも心に響くものがある。概して物語が進むに従ってよいショットが増えていくような印象を覚えたが、なによりもフィックスで観客を引きつけられる画面を作れていることが頼もしい。

南アフリカが舞台になっているという点で(私たち日本人には)目新しさはあるものの、やはり物語が類型的である感は否めない。それでもこの物語がいくらかでも感動的たりえているとすれば、それが切実な「名前」の物語として語られているからだろう。赤ん坊に触れることで主人公ツォツィが回復するものとは、「優しさ」「人間性」「品位」などといったもの以前に、まず固有名詞としての自己の「名前」なのだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)MM[*] 林田乃丞[*] のこのこ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。