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[コメント] キサラギ(2007/日)

何事も締めが肝心。食事の最後にコーヒーを期待してたら、巨大フルーツパフェが出てきちゃったような呆然。080903
しど

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







舞台がネットの掲示板によるオフ会、しかも、売れなくて自殺したアイドルの追悼会でもあるなんて、期待せずにはいられない設定。展開も期待を裏切らない、むしろ、良い方に裏切られるばかりで十分楽しめた。

人物設定を含めて、あらゆる設定が伏線として上手く機能しているのが、この作品の特徴だろう。登場人物たちの気持ちの描き方も、単なる「売れないアイドル」から、最後には普遍的な異性への思い、そしてそれに応える相手、という関係性が明らかになっていく。伏線に応じてストーリーが展開するにつれ、それぞれの立場による期待と反応が絡み合うのも心地良い。

当然ながら、「如月ミキ」は単なる商品としての「アイドル」だけではなく、雑貨屋の客だったり、幼馴染だったり、生き別れた娘という現実の姿もある。そうした関係性が語り明かされるにつれ、異性に対する現実的な「偶像・虚像」としての「アイドル」感、つまりは、「恋愛」の入り口にも似た、相手を求めようとする甘酸っぱさを思い出させるのが、この作品の醍醐味でもある。

そして、夜空を見上げながら、成就できなかった思いを噛み締めてして終わる。おお、素晴らしい。感動をありがとう。

のかと思ったら、最後に、商品としてのアイドルを晒し、消費しつつ昇華しちゃうオタク芸の祭りへ、さらに蛇足に靴下を履かせるような宍戸錠の登場。もう、お腹いっぱいです。

映画の世界で「アイドル=偶像」を空想して楽しんでるのに、実像を晒してしまう愚挙は何なんだろうか。この過剰なサービスは、売れずに血迷った挙句、つまらないことに固執して過剰になっていくB級アイドルと、さらにそれをも愛してしまうファンとの濃密な関係そのもののようでもある。まあ、見上げた夜空の星も、簡易プラネタリウムによる虚像だし、全てがアイドルまみれになるのを狙っているなら、それはそれで立派。

個人的には岡田有希子のトラウマを抱えているので、この物語、十分感動したんだけどなぁ。残念。

(評価:★3)

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