[コメント] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007/日)
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陰影の描き込まれたキャラクターの立体感はむしろ余計。あの平面的なベタっとした絵こそが或る世界観を醸し出していた筈なのだが。感情的なディテールは却って雑に。間を大事にしない演出。心なしか声優たちの感情も微妙にぶれているように思える。
ヤシマ作戦での、「自分の息子を信じて下さい」などという青くさいミサトの進言を受け入れるゲンドウという浪花節。作戦前にミサトがシンジにリリスを見せて、人類を救えるのは貴方だけだと諭して手を握る、というのもまたベタな演出。
ただ、僕としてはこれは名シーンだと考えている、死んだ表情で「目標をセンターに入れてスイッチ」を繰り返すシンジ、この場面がヤシマ作戦で反復されているように見えるのが面白い。この作戦でも、シトの心臓部に光線を直撃させる為の細かい調整は機械がやり、シンジが行なうのは、まさに「目標をセンターに入れてスイッチ」のみ。日本中から電力を接収しての攻撃、という作戦内容を、父やミサトらに言われて嫌々闘っていたシンジが他者の想いをひき受けての主体的な闘いへの意識に目覚める、という流れに導こうとしているのを感じる。それが充分に上手くいっているかはともかく。
一話ごとに分かれていた物語をひとつらなりで観せる映画版だからこその演出だが、エヴァがエヴァたる心理的な屈折が弱まっているのには落胆させられる。
ヤシマ作戦で登場したシトの、幾何学的な造形をいじくりまわした動きのつけ方は、単なる視覚的な面白さに過ぎないとはいえ、面白いのは確か。ああした、全く人間とは異質に見える対象が、死に際しては真っ赤な血を流すという演出には、純然たる「他者」が最後の最後には他者ではない面を見せるという点で、意外にエヴァのテーマ的な核に関っているようにも思える。
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