[コメント] 長江哀歌(2006/中国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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と、一人の初老の男でカメラは止まる。男は暑いのか上着を脱ぐ。ランニング一枚だが着古されており、ゆるゆるになっている。男のぎりぎりの生活状態がわかる。
とうとうと流れる長江のように人の営みはゆるぎなく続く。映画ではダム建設のために水没しようとしている古都に家族を求めて探し回る男と女の二人が映像化されているが、二人の間にはまったく何の関係もなく、このシチュエイションが見終わった後何かぶっきらぼうに思えてしまう。二人とも妻、夫に邂逅できるのだが何か明るい結果にならずどちらかというと複雑である。
大体16年も音信不通の夫婦が元に戻れるとも思えず、また2年とはいえ若い夫婦であるから長い時間であろうと思う。
中国では1年という時間軸は現代日本と相当差があるかのような描き方のようにも思えるが、長江を見つめている人間とは違ってくるのであろうか、、。
ジャ・ジャンクーの映画は何故か好きでひたひたと染み込んでしまう気分にいつもさせられるのだが、今回はそれがなかった。いつも、若者が主役であったので青春のノスタルジーのようなものを感じていたのだが、今回は思い切り年齢が上がってしまい違うテーマになってしまったのだろう。
前作まで若者の代表だったチャオ・タオでさえ、体の中に常に水分を求めているようでボトルの水ばかり飲んでいた。青春への回帰から、水没する古都へのテーマ転回はジャ・ジャンクーの映画人生でも過渡期なんだろうなあと思う。
そういう意味でこの映画はジャ・ジャンクーの今までの作品のひとつの区切りでもあり、これ以降新たなテーマが飛翔されるはずである。その意味でも重要な作品だと言える。
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