『きみにしか聞こえない』の原作でもある短編集からの映画化で、こちらも乙一の手腕が光る作品。きみにしか聞こえないにはどっぷりとはめられたので、そこそこ期待を持って鑑賞した。その期待分は十分答えてくれたと思うが、コメントに書いた通り、話の腰を折るかのように流れを悪くしている部分があったのは残念だった。

前半部分で、アサト（小池徹平）・タケオ（玉木宏）・シホ（栗山千明）が公園を修繕するシーンが出てくるが、何の説明もないので、なぜそういう行為に出るのか、またその行為にどういう意味合いがあるのか結局最後まで分からない。また、終盤の事故のシーンで、スローにして事故現場を一通り映すのだが、その意味にも疑問を感じる。タケオが現場に到着した後にある少し俯瞰で現場を映すシーンだけで十分で、アサトのところに駆け寄らせれば良いのではないか。

このような後々まで引きずるシーンがあるものの、よくまとまっていると思う。埋もれさせるには幾許かの惜しさを感じる作品である。