[コメント] 靖国 YASUKUNI(2007/日=中国)
中国人監督が靖国神社でドキュメンタリー映画を撮影した事には感心する。しかし私にとってはこの映画にそれ以上のものはない。★2.8点。
稚拙なドキュメンタリーは世間に多い。この映画に関しても靖国神社というキワモノを扱った挑戦心には敬意を表したいが、画質といい刀匠に寄りかかった構成といい、出来は宜しくないと言うしかない。
内容の多くは旧知の事実であり、得られるものは少なかった。戦争中8100振りもの刀が神社内で鍛えられ将校に頒布されていたとは知らなかったが、あの神社ならそういう事もあるだろう。当時の刀鍛冶がご健在なのは驚いたが、その貴重な体験談や辿り着いた考えを引き出せていないので結局ガッカリしただけだった。
私にとってはそうだが、しかし他の観客にとってはどうなのかは知らない。映像で観る臨場感が力を発揮したかも知れない。こんな神社が存在する事を知って、あんな人々が存在する事を知って、こんな問題が存在する事を知って何かしらの衝撃を受けたひとがいるのなら、意味はあったのかも知れない。ただ他のコメンテータの皆さんが指摘する通り、幾つか編集や演出におかしい所があるので誤解するひとが(特に外国人に)出そうな気もする。
靖国問題というのは一宗教法人である靖国神社側だけでなくて、右派政治家や国家政府の意図(意思)や、戦時中の思想から脱却出来ない国粋主義的なひとびとの思惑、更には日本の動向に神経質な北東アジア諸国の反発(干渉)が絡み合っているので、簡単そうで意外にスッキリとした解決策はない。そういった背景への関心もなくこの映画を観ると、それはそれで目に映ったものに安直で不誠実な結論を出してしまいそうで、その点も気が重くなる。
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