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[コメント] トゥヤーの結婚(2006/中国)

ラブコメディなどというジャンルの映画が存在しない国家においての、普通の男と女の恋物語。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヒロインは夫を捨てて別の男と結婚すべく、懸命になっている。不倫でもなんでもない、夫の足が使い物にならなくなってしまったからだ。ヒロインには二人の子供がいるし、働けない夫も養わねばならない。だから自らの好みとは関係もなく、ビジネスライクに次の結婚相手を探す。

そんな彼女に、妻に何度も裏切られた役立たずの隣人は惹かれ、モーションをかける。恋が大っぴらにならないこの舞台の上で、彼だけがヒロインを支えてやろうとする。だがここは、しつこくも言うがラブコメの存在しない国だ。町に逃げていった先妻に離婚認めのサインをもらいに隣人が向かっている間に、ヒロインは早々に別の男と結婚しようとする。彼女の商売物の羊が一頭残らず失われてしまったために、ともかくも家族と自分が生き抜いていくためだ。我々はここに愛の不毛ではなく、そんなレトリックを弄ぶ余裕もないギリギリの道を歩む女の姿を見る。『トゥヤーの結婚』は総ての家族が幸せに生きるための儀式であり、浮ついたロマンスの結果ではない。

結局ヒロインは役立たずの隣人と最後の最後で結ばれるが、それがハッピーエンドを予測させるものでないところにこの物語のツボがある。子供は「ふたりの父を持つ」ことを理由にからかわれて喧嘩を始め、先夫はガマンできず喚き散らす。そしてヒロイン自身けして幸福に頬を染めてなどいない。必ずしも最後に愛は勝たない…と言うよりヒロインの愛はハリウッド的なそれとは全く違うものであることを思い知らされる。モンゴル辺境を舞台に描いた、これもまた立派な「愛」の物語なのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)青山実花[*] ペペロンチーノ[*]

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