[コメント] きみの友だち(2008/日)
決して悪い気はしない。全般的に演出は厳しさを欠くが、それが「甘さ」や「温さ」といった否定的言辞ではなく、語り口の「優しさ」という肯定的言辞に云い換えられるべきものだからだ。柄本時生のいたたまれなさは山本浩司級。吉高由里子はここでも無駄にエロティック。
画面がちゃんと台詞の落とし前をつけている。たとえば、小学生時代の恵美と由香が「同じ速度で歩く」カットがあること。雲のあるなしにかかわらず多くの画面で「空」を映し込んでいること。後者は単にロングのカットが多いためだけではなく、「高低」に意識的な画面設計がなされていることも証している。校庭側から校舎を見たときに画面を横切る階段。柄本が恋慕しているピアノ少女を送るシーンの坂。乱闘シークェンスの土手。等々。この映画における画面の「高低」とは、もちろん画面の視覚的な充実に貢献するものとしてもあるのだが、同時に「高くは翔べないが地に足をつけて生きる人々」から「空の高みおよびそこに浮かぶ雲」までを丸ごと捉えるというパースペクティブの優しさの反映でもあるだろう。
また、若干明度を落とした画調が劇中幾度も登場する「黒白写真」との親和性を高めている。
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