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[コメント] きみの友だち(2008/日)

廣木隆一は流行の難病モノを撮っているのか。そうではあるまい。彼のカラーのひとつに「女性目線」がある。ここに於いて青春期の瑞々しい女生徒たちの言動、行動を廣木は描こうと試みる。自分はその無謀な挑戦を愛し続けているのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







恵美は自分の歩行障害を呪っている。幼い頃より意地っ張りでプライドの固まりのような恵美のことだから、むしろその「罪」を由香になすりつけるようなことまでする。でも、そんな彼女に由香は優しい。まるで自分が今日を生きている「罪悪」を他者からも引き受けて背負ってでもいるような娘なのだ。それは、由香の持病が致命の物だからだろう。そんな彼女の心根に、恵美は深く悔いる。そして、うって変わって無二の親友と呼ばれるようになるのだ。

そんな彼女の愛する「もこもこ雲」はふたりの共感の象徴となる。だが、カメラはそれらを写さない。相変わらず芦沢明子の秀逸な撮影が、二人を巡る風景を距離を置きながら、いい意味の「神の目」で誇らしげに見せるだけだ。だが、由香の死の後、堰を切ったように画面に出現する雲、雲、雲。それは胸を引き裂かれるような感情を呼び起こす。そして恵美の一言が、これからもポジティブに生きてゆくことを誓う彼女の意志を物語るのだ。この押し付けがましさの全くない明るさ。廣木の冴え渡る手腕は健在だ。勿論だとも、青春映画かくあるべしだ。

(余談)でも、やっぱりこのタイトルなら、Carole Kingに主題歌を任せて欲しかったなぁ…。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tkcrows[*] 3819695[*] セント[*] 地平線のドーリア

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