[コメント] 20世紀少年 第1章(2008/日)
様々なタッチの描写力と魅惑的なサスペンスがバランスよく配された意外にGOODなジャパニーズエンターテイメント
原作の漫画と比較することはあまり意味のあることではないと思わせる堂々たる作品である。堤幸彦の独特の演出センスは決して奇をてらうことなくほどよい魅力として発揮されているし、繊細なカラーリングで唐沢悟のカメラは様々なシチュエーションを説得力豊かに操作している。こうした安定した堤幸彦ワールドに、役者陣はTV系俳優群といったマイナスに見れば一辺倒なイメージが不利なはずでありながらも嫌みなくドラマと調和し、その意味では良くも悪くもなるギリギリの境界線で作品のクオリティバランスを保っていて、意外にも懐の深さを見せつけている。マンガ的と軽々しく言うものだが、そもそもの原作の世界観を確かなポジショニングコンセプトの中で処理した巧みなプロダクションワークと言えよう。ユーモアというものがいかに映画という幻燈的な芸術を逆説的に信憑性を高めることに貢献しているかが、この作品ではきわめて重要な位置にある。しかし、恐らくはその新鮮味も回を追うごとにトーンダウンしていくのではないかという懸念を抱かせる終盤であった。次作もサスペンデッドな展開を期待したい。単なるドンデンの連続や、記憶の後付け、パワーゲームに陥らなければ、ひじょうに豊かなエンターテイメントの醸成が可能だろう。
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