[コメント] 劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇(2008/日)
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言ってみれば若く冴えない男の魂のみを揺さぶる通俗作品だ。だがこんなにもこっぱずかしい文句を今並べ立ててくれる作品が何処にある?
「俺が信じるお前を信じろ。いや、お前が信じるお前を信じろ!!」
なんてストレートで使い古された、今聞けば斬新な言葉であることだろう!この文句に導かれて主人公は勇気を奮い立たせ、彼の駆るメカニックは立ち上がる。そしていきり立つ男性原理のようにドリルはメカの全身から突出し、倒すべき敵を粉砕するのだ。
主人公シモンは穴掘り以外のとりえのないドンくさい少年だ。その彼が兄貴と仰ぐ男・カミナの生き方を見せられることでシモンは力を得る。そのカミナが志半ばにして死んだとき、シモンは絶望のどん底へ叩き落されるが、そんな彼が守るべきお嬢様・ニアを得て、彼は始めて彼女を守れるのは自分しかいないことに気づくのだ。この判りやすいといったらとことん判りやすい論理といったらどうだろう。実に古きよき少年漫画を髣髴とさせるじゃないか。
ところで、この世界のメカニックはすべて顔を持つという発想は面白い。リアルロボット全盛の現代をあざ笑うかのようにメカたちは笑い、怒り、慟哭する。このスタッフはスポンサーのおもちゃ屋のご機嫌取りにではなく、本気でロボットを好いて作品に活躍させているのが見て取れる。SFの名言(といいつつ、同じことをゲッベルスも言っているのだが)に、嘘をつくならでかい嘘をつけ、というのがある。まさしくその言葉通り、巨大戦艦にすらでかい顔はつき、挙句の果ては…というのは知らない人のために遠慮しておくとして、グラスの底に顔があってもいいように(なんちゅー古いたとえだw)戦艦にも顔があっていい。顔は心の窓だ、そこにキャラの魂が宿る。そしてあのストレートきわまりない馬鹿な男のせりふをしゃべるのだ。古い少年漫画ファンにはたまらない。
兄貴ときたら、豚の大群に乗っかって村の脱走を図ったと思えば、最後には文字通り真っ白に燃え尽きる。そのまんまジョー・ヤブキなのだが、生き方はちょっと違う。彼は一人の少年をいっぱしの男にたたき上げた。自分にない良さが弟分にあることを知っていた。泣けるでしょ、こりゃ。
ぜひTV版を観ていない人は見て欲しい。俺はこんな男の汗が横溢する作品を肯定せずにはいられないからだ。何が「萌え〜♪」だ。男も女も懸命に生きているこんなアニメをこそ俺は望んでいた。話は最後まで知っているが、2部以降もぜひ拝ましてもらうつもりだ。なまんだぶなまんだぶ(だから違うって)。
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