[コメント] 容疑者Xの献身(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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映画は原作の雰囲気を良く出していました。トリックもほぼ原作通りで、原作が素晴らしければ映画も良くなるという見本のような映画でもあります。まあ、脚本もなかなかピーンと張り詰めたものを出しています。優秀です。
ミステリーとしてはアリバイ作りと動機付けがこの作品の重要部分ですが、前者は原作通りで素晴らしい。恐らくこのアリバイ作りは世界のミステリー史上でも初めてではないか、と思えるほど秀逸。
ここから完全ネタばれ。
で、さて、僕の心を震えさせた動機付けの部分。この作品の最重要なところであります。映画では常に号泣している自分が小説では何十年ぶりに号泣に到ったといういわくつきの部分であります。
ところが、映画ではまあ、話を知っているせいもあるんでしょうが、ほとんど涙しませんでした。驚きました。何故か考えました。
やはり、一番の理由は堤真一にあると思います。原作では目立たない、一生女性と縁のなさそうな太り気味の男性を設定してあったように思います。そんな男が人生に絶望したとき、隣室から聞こえる母娘のけなげな生活感を感得することにより生きる意義を見出していく。そして起こる殺人劇。彼の全人生を犠牲にしても守るべき人たちへの無償の愛。堤は演技力で彼なりの崇高さを演じ切りましたが、やはり容貌的にはそこまで守らなければならなかった説得力に欠けました。
いま一つは隣人の生活描写が雑でした。かすかな物音で一度は死にかけた男を再生させているのですからもっと丁寧に、じっくりと描写して欲しかった気がします。WIIなんかで茶化さないで欲しかった、、。(原作はゲームシーン、どうだったか忘れましたが、、)
とはいうものの、ミステリー映画としても本年屈指の出来だと思います。福山雅治の、男でも仕方がないと思わせるかっこよさは筆舌に尽くしがたいが、脇役俳優陣も皆生き生きしていました。長塚圭史をあんな役で使い捨てするのもワクワクします。一方の主役である柴咲コウはちとつらい役柄ではありましたが、、。
でも、2時間強、画面をじっと見つめることの出来る映画って、そうそうないと思います。秀作です。
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