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[コメント] 容疑者Xの献身(2008/日)

薄い壁から伝わってくる「愛」に恋した男のストーリー。 孤独の中で隣から聞こえてくる幸せな声に、嫉妬しますか? それとも、それに焦がれますか? そんな幸せな家庭に焦がれた男の哀しきストーリー。
うさこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ストーリーの重要なキーワードは「美人」。台詞の中に、やたら「美人」を協調していた。 そして「美人」だから男は恋をしたのだと納得し、人生を掛けてまで行った行為に大いに共感し涙できる。

では、不美人だったら?

事実は小説より奇なり−とは良く言ったもので、2009年立て続けに女性による連続殺人が報告された。 結婚詐欺と殺人の容疑者K(http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/100201/crm1002010854004-n1.htm)と、 鳥取ホステス連続殺人事件のU(http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2010012800076&genre=C1&area=Z10)だ。

この二人はどう贔屓目に見ても「美人」という形容詞が当てはまらない。 それなのに、このモテぶりはどうだ! 何せ、被害者にとってはお金をむしり取られただけでなく「命」まで掛けるレンアイなのだから正に「献身」そのもの。いやー、すごい。なんだか希望が持てる気がするww

しかし、この話は興味深いものであっても、感動はしない。 この献身は、自ら望んだことではなく、身に降りかかった災難だから当たり前だ。

さて、話は元に戻して堤真一演じる大学教授は、隣の「美人」に恋をする。 しかし、数学にしか興味のなかった彼は、思いを打ち明けることもせず、ただ想像する。薄っぺらいアパートの壁越しに聞こえてくる笑い声が、まるで自分の家族であるかのように。 彼女の売るお弁当が、自分のために作られた家庭料理であるかのように。

それが彼の幸せだった。 その幸せに生かされていた彼は、すべてを掛けて彼女を守り通すことを決意する。

それにしても、東野圭吾の罠には毎回驚かされる。 その罠に知らず知らず陥ってしまったのには、堤真一の演技力のおかげであることは言うまでもない。その存在感たるや、映画を見終わった時、人気ドラマ「ガリレオ」の映画化を見たのではなく堤真一主演の「容疑者X」という映画を見た・・・という感想を抱いてしまう程。

この映画の中で印象的だったのは、真実を知った松雪泰子が警察に名乗り出た時堤真一が叫んだ時。 「なんでー、どうしてー!!」 助けたかった。 何故、僕の事なんか気にすることはないのに。 君たちの幸せだけが僕の生きがいだったのに! そんなすべての思いが込められたこの叫び。 悲痛な顔で叫ぶ堤真一に涙したのだが・・・。

ふと、ある映画を思い出した。 そう。これと同じ台詞を発した映画があった。 駄作『わたしは貝になりたい』で、死刑が決まった中居正広が発した台詞だ。 そのあまりの下手さに見ている方が恥ずかしくなった。 中居君。演技とは格あるべし。

(評価:★4)

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