[コメント] レッドクリフ PartI(2008/中国=香港=日=韓国=台湾)
鳩の飛ぶシーンの長回しを見つつ、「これを《長回し》と呼んでいいのでしょうか溝口監督?」と問う自分がいる。
見た直後、「実写づらしたアニメ映画と思った方が正確」と唾を吐き捨てるように書き捨てるつもりであったが、やめた。そんな簡単な話ではなくなっている気がした。そのあとずいぶんと考えたが少しも心は晴れない。時がたって、今、心をよぎる千々に錯綜した印象を書こうという気に多少なった。
映画はいつの間にかフィルム芸術というポジショニングから降りようとしている。今や実写とアニメーションの境界のなくなった時代の中での、映画制作の方向性を、映画制作者のモチベーションを、映画鑑賞者の見るべき視点をどこに設定するのかということを改めて真剣に考えるべき時代に来たことをこの映画を見ながらつくづくと感じる。
いつかヴィヴィアン・リーと寸分たがわぬ生き物か生き物でないか判別のつかぬ何者かが『続・風と共に去りぬ』だかに登場する時代が来るだろう、そのときこそ演劇という先行芸能や写真芸術から多大な養分を吸い取って奇態な花を咲かせたこの映画芸術の大きな転換点になるだろうと21世紀に入った頃から予測していた。それはまだずいぶん先の事と感じていたが、この作品を見て自分が甘かったことに気づいた。この作品は路地裏強盗のように、不用心で迂闊な私のわき腹に匕首を突きつけている。もう何かが始まっている。
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