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[コメント] 大阪ハムレット(2008/日)

三男の大塚智哉がめちゃ可愛い。と思うのは私の個人的嗜好のためではなく、演出家が彼を可愛く撮ろうと心を砕いているからだ。それは光と風を操作した冒頭の顔面アップひとつを見ても明白だろう。女物の浴衣で少年と花火をするシーンの倒錯性、そこでの「俺の悩みを増やすなよー」という次男のぼやきもよい。
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**ネタバレ注意**
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終盤において、新たに生まれた赤ん坊の本当の父親は誰かという問いに対して、長男の久野雅弘は「まあ普通に考えればおっちゃんやろな」といかにも平気に答える。よい場面を多く持った映画だが、それらに通底しているのはこの醒めつつも温かな視線だ。云い換えれば、それはバランス感覚だろう。たとえば、父親が誰か分からないという「血」の問題は三兄弟全員に平等にふりかかっているはずにもかかわらず、それに頭を悩ませているのはもっぱら次男のヤンキー森田直幸だけという劇の仕組み方。いくらでも泣かせに走ることができる学芸会(とりわけダンス)シーンの演出の抑制。

松坂慶子岸部一徳の疑似夫婦も『死の棘』からは遠く離れた微笑ましい造型だ。岸部は相変わらず巧いし(巧すぎてイヤ、という説もありますが)、肉体と母性の各々の膨張ぶりがシンクロした松坂も役にふさわしいと思う。

「堤防」(川)や「歩道橋」といった日常的構造物の舞台装置としての使い方も好ましい。果たして「ハムレット」が有効に機能していたかは疑問だが、このようなロケーションへの配慮からも、少なくとも「大阪」という地名を題名に持つにふさわしい映画だと思う。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 水那岐[*]

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