[コメント] チェンジリング(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
昇進の話をそっちのけで息子に会いに帰りたがり、
牧師と初めて会う際、朝食を勧められても断り、
反対に精神病院では正常に見られるために不味い飯でも食べ、
同僚のパーティーの誘いも、上司からの食事の誘いも断る主人公。
頭の中は自分の息子の事でいっぱいなのだ。
(話をそらすが食事の件で付け加えると、息子はサンドウィッチを食べないままいなくなり、謎の少年と始めに一緒にいたおっさんも、完食せずにいなくなる。食べる食べないの選択が、獲得と消失の選択に繋がっているように思える。主人公は何を選択したのだろうか?)
最終的に腐りきった警察と凶悪犯に立ち向かうが、それもはじめに言った「ただ息子を取り返したい」(そして自分と同じく立場が脅かされた孤独な女性達を解放させたい)から、だけなのだ。
また、主人公はどこまでも孤独だ。
私達は一切、彼女がなぜシングルマザーなのか知る事ができず、「再婚」というキーワードも悉くこの映画では排除されてる(上司はいかにも気がありそうなのに)。新しいパートナーを探す、新しい子供を産む、という発想が更々ないのである。
また、あの子供がやってきた時も普通ならば近所の人や息子の友達、自分の親戚などに向かい入れられて、息子ではない事が瞬時に証明されると思うのだが、キャリアウーマン故に近所づきあいも無いのだろう、医者により近隣の人には「彼女はビョーキだ」と吹聴され、そして、映画内には彼女の親、兄弟、親戚が登場する事は全く無い。
キャリアがあるとはいえども、直接親身に手助けしてもらえる者もいない一人の女性は権威の下では無力な弱者にすぎず、世の中から抹殺されかけるが、唯一教会の救いを召喚する事は許されている。
救いようの無い状況(とはいえ、これほどの酷い事を誰もが黙殺するほど世の中腐ってないのですね)で一筋の光が導かれ、彼女は屈せずに立ち向かう事が出来るようになるが、ここからのリベンジの描写は容赦ない。ここで監督の「怒り」は半端なく炸裂しているといっていいと思う。おじいちゃんを怒らせると怖い。
まとまりの無い感じになってしまったが、映画を観て、観ているこちらまでもが我を忘れるくらいこんなに感情を揺さぶられる事は久しぶりであった。
これほどやりきれない状況で、微かな希望を持ち、生きていこうとする力強さ。
この映画には、本当に屈強で、揺るぎのない「意志」を感じます。
10 1/5 DVDで
(評価:)
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