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[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

フィクションを凌駕するリアル(但しちょっと盛りすぎ)
ごう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







オレが「リアルだ!」と言ってみても、恐らくインド人からしたら「こんなインド、リアルなんかじゃないやい!」と言うに決まってはいるのですが、そこはダニー・ボイルが切り取ったインド、同じ外国人であるオレが観たら物凄いエネルギーとリアルを携えて画面から迫って来た訳で、テンポ良い演出と相まって大変気持ちよく、それこそ「ミリオネアの問題をこれまでのハードな人生経験、机上の勉強ではなく経験で学んでいた」と言う大嘘も割と気にならないほどに画面にのめり込むことが出来ました。

ただ、やっぱりこの映画根っこの部分が一番の大嘘で、言い換えれば「御都合主義」で出来ちゃっているんですよ。昔から大嘘を隠すにはそれ以外の部分はとことんリアルに仕掛けていかないといけないってのが常道だと思うんですが、実際ダニー・ボイルはかなり頑張っているのですが、それでも一箇所だけやりすぎというか余計なところがあって、大筋において嘘をゴクリと飲み込んで鑑賞していたオレもそのシーンでは何と言うか、「あちゃーっ」って感じになってしまいました。そのシーンとは、

眼を潰された昔の仲間と再会するシーン。

・・・いやぁわかるんですよ。ぶっちゃけ入れたくなるよ。伏線の回収としても立派だし、「お前の葬式ではオレが唄ってやるよ」なんて台詞の諸行無常感なんてちょっとグっとくるしね。ただこの出会いを入れちゃうと、折角前段で「ここは何万人もの人がいる大都市、そんな中で彼女を見つけるのは至難のワザ」みたいな前フリまで入れた本筋の「昔の彼女を探す困難」ってハードルが途端に低くなってしまうんです。だって昔のツレに簡単に会えるんだもの。加えてもっとタチが悪いのは、この小さな御都合っぷりで、目の前の出来事が監督の匙加減で作られたフィクションであるという現実に引き戻されてしまうんです。少なくともオレは引き戻されてしまったんです。

もっともこれってすごくレベルの高い話であって、大概の映画においては作り物であることなんて当たり前、その上で「ほほう、そうきたか…」なんて、展開を楽しみながら悦に入って鑑賞している訳ですから、そのような凡百の映画よりは遥かに上であることは間違い無いのですが、極稀に出会う「フィクションを忘れさせる作品」になりえた可能性がある作品だっただけにそのシーンだけ残念度が高かったのもまた事実であります。

まあでも、オレの友人は歌舞伎町でオネエチャンのいる店に行ったら、待ち合わせてもいないのに結構な確率で同じ友人に会うそうで、広い歌舞伎町ですらそういうことがあるんだからインドでもそういうことがあるのかもしれませんな。

(評価:★4)

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