[コメント] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
先ずこの作品、単体としての出来はよかった。予想外と言っても良い。
前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』でわたし自身が「既に一回やったことをなぞるだけでは映画にした意味がないだろ?」、「次回作は色々演出も凝ってくれることを期待しておきたい」なんて事を書いたのだが、少なくとも、私が書いたそのまんまを本当にクリアしてくれた。その辺意外な事で喜ばせてもらったのだが、それでは、これが本当に観たかったものか?と自分自身に問いかけてみると、ちょっと微妙ではある。
一つ言えるのは、「やっぱり一回りというのは長かった」ということだろうか。
すでにTV版の放映から14年も経過。受け手の嗜好も大きく変わっており、本作は現代に合わせ大きく様変わりを果たした。
その前に1作目として『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が既に公開されているが、この作品の基本路線はTV版とほとんど全く変わっておらず、その分安心した。と言うか、物足りなさを感じたものだが、二作目である本作は、物語を大きく変えた。TV版をベースに新カットを多量に加えた1作目とは異なり、本作はその大部分が新作カット。これによって本来持っていた物語さえも大きくて直しを入れることとなった。少なくともこの点、一作目から大きく一歩を踏み出した作品にはなっている。
具体的に言えば、主人公のポジティヴ化と、周囲の女性キャラの素直化が図られていると言う点だろう。そのため、見応えがあるが、一方では見やすい作品になっている。
これはプラスの部分もあるが、マイナスの部分もある。
オリジナルのTV版は殻にこもった男女が自分を守るために他者を傷つけていく鬱展開が見所だった。こんなに暗い作品なのに、それでも見せる力を持っていた作品でもあったのだ。とはいえ、これをそのまま現代に持っていくのは無理があったかもしれない。
そして起こったのは、主人公が気の優しい面のあるヒーローになったこと、主人公に好意を持っていることをどこかに匂わせるヒロイン達という構図が出来上がってしまった。これは非常に現代的ではあるが、同時にもの凄いステロタイプの、あまりにありがちな設定じゃないか?と言う事で、少々唖然。
観ていて鬱になるのが分かっているのに、観なくては気が済まない。というぐいぐい引っ張っていく物語ではなく、観たまんまを受け止めていればいい物語になった。やはり10年という時代の溝がなした技なのだろう。
その「軽さ」を受け入れられるかどうかで、本作の評価は決まる。概ね現代の風潮に合致しているので、その「軽さ」を素直によく受け止める人の方が多かろうが、真っ正面からテーマに取り組んだ「重い」ヱヴァを観たがっていた人にとっては、寂しい作品になってしまったのでは?
いずれにせよ、3作目を観た時に、はっきりこの作品については書かせていただこう。
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