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[コメント] ノウイング(2009/米)

演出、キャラクターとも満足できるレベルだし、終盤までは脚本もさほど悪くない。だが「エホバの証人」のパンフレットのようなヴィジュアルがどうにも好きになれなかった。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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オープニングから随所に脚本・演出の工夫が光る。大気圏外からズームアップしマサチューセッツの夜景を経て、ニコラス・ケイジの暮らす郊外の家の俯瞰ショットに連なるくだりに期待させられる。

息子ケイレブ(チャンドラー・カンタベリー、『ベンジャミン・バトン』でピットの幼少期を演じた子役)との会話や補聴器、ウイスキーといった小道具を使って、この親子の背景を紹介する手腕も過不足ない。ちょっと鈴木杏似のケイジの妹(ナディア・タウンゼント)を出す唐突さもおもしろい。

うまいのはルシンダが書き記した数字の手紙の行方だ。タイムカプセルに入れる、50年後にそれを開ける、手紙がケイレブの手に渡るという流れも自然だし、ケイジが酒のグラスを置いてしまったのがきっかけというのも大胆な筋運びだ。

同僚教授のリアクションはあまりに想定内で面白みはないが、残る数字の謎が経緯度だとわかるシーンも流れとしてはスムーズなので、ケイジが航空機事故に出くわす強引な展開も許せてしまう。ここは墜落から炎上、現場でのケイジの移動がワンシーンワンカットで仕上げられていて臨場感はあるのだが、炎はあとからCGで足されたことがわかるし、全体の質感としてはエアブラシで描かれたイラストのような、作り物めいた雰囲気が感じられた。

このヴィジュアルは『アイ、ロボット』でも感じたので、アレックス・プロヤスの好みなのだろう。あまりに生々しい描写は避けたいということなのかもしれない。だがそれが行き着くところはケイレブが見る「燃え上がる森林」のイメージであり、いかにも異星人ですと顔に書いてあるようなエイリアンの造形であり、ケイレブとアビーを連れ去る宇宙船であり、極めつけは彼らが向かった新天地の極楽浄土の丘なのだ。こうしたイメージからはどこか恣意的な胡散臭さを感じ、シャマラン『サイン』のように厚顔無恥なホラ話になっていないだけに、見る者としては右肩下がりにテンションが落ちていくのであった。

(ただ、『ミスト』の結末を批判するかのような、ケイジとカンタベリーの今生の別れのシーンはそこそこよかった。)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶 3819695[*]

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