[コメント] 不死身の保安官(1959/英=米)
陰惨なことは何ひとつ起こらないだろうという安心感。ウォルシュはコメディもお手の物だ。この可笑しさは英国紳士をワイルド・ウェストに置くという着想の妙を貫いてさえいれば得られるほど簡単なものではない。自身の場違いぶりをどの程度認識しているのか分からないケネス・モアがよい。
ジェーン・マンスフィールドはよく画面映えする女優だ。容姿の美しさはもちろん、鉄火肌なところと女らしいところの按配にくすぐられる。モアとお互いに名前を叫びあってそれがこだまするシーンであるとか、ハッピーなシーン・笑えるシーンには事欠かない。
「西部劇」に対するパロディと云ってもよいほどの距離の取り方はとうに爛熟を迎えていたジャンルにはふさわしく思われるが、いかにも銃撃戦演出の甲斐がありそうな岩場の斜面をあつらえながら、銃による解決を拒否する平和的な展開などからは同時代性を超えたオフビート感さえ漂っている。「白人の視線」であることから免れるものではないとしても、先住民の描き方も微笑ましいものだ。しかしモアの発明家という設定がほとんど活かされないことには(冒頭の自動車爆発や自動的に飛び出る銃が面白いだけに、なおさら)不満を覚える。
IMDbのTriviaによると、これはスペインで撮影された最初の西部劇ということだけれども、そうだとすれば史的な重要性(たとえば「イタリア製西部劇の興隆」や「現在にまで至る撮影地としてのハリウッドの空洞化」の端緒として、など)についても無視できませんね。
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