[コメント] 銀座カンカン娘(1949/日)
ストーリーらしきものはなく、焼け跡で黙々と食うためだけに働くかつての若者たちへの応援歌のごとき一作。高峰の素っ頓狂な能天気ぶりも愛らしく、「虎や狼」の群れる夜の歓楽街にも夢があると歌うあたりは「必要な欺瞞」だ。甘い夢だけ振り撒きゃいいのか。応、ないよりは夢があったほうがマシだ。映画はこの時、夢の押し売りのため機能していたのだ。
技術的には見るものはない。下手な編集でだらけ切った、極楽とんぼな若者たちのじゃれ合いだ。だが、この時代には必要だったものだ。笠置シヅ子だって、志ん生だって芸人としては大物なのに、敢えてこんな映画に出るのは時代の要請だ。
チンピラの復讐で己を殴られるままにした男が、「殴らなかった僕は奴らより尊い」と臆面もなく語るのもこの時代ゆえだ。
甘ったるい夢に餓えていた大衆が、求めていた心の安堵と、立ち上がる気力。それを見つめさせるきっかけだったのだ、これは。
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