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[コメント] 沈まぬ太陽(2009/日)

題材の濃密さとその題材の扱いの空虚さが同居する。文庫5冊の分量を扱っていることを考えれば健闘しているのは間違いないが、恩地・国見の信念も行天の「裏切り」も根の部分の描写が甘く、中途半端さが否めない。力作だがもったいない作品である。
Master

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これだけ出来るのなら、一本で詰め込もうとせず二部作三部作にする結論をなぜ出せなかったのか。濃密な断片はそこかしこに見えていて、それだけでも良作の匂いが凄まじくあるのだが、そのエキスのそぎ落としもまた熾烈なものがあり、充実感と空虚感が同居する稀有な印象が残った。

1つ挙げれば、恩地の家族がばらばらになっていることが娘の手紙から伝えられるシーンがあるが、それをケアしている描写はどこにもなかった。あのような状況になっていて何もなくまとまるはずはない。ここに手を入れだすと時間がどれだけあっても足らないことは理解するが、こういう姿勢が根の甘さに繋がる。

あと、このご時世にあまりにお粗末なCGシーンがあったのも残念である。1シーン・2シーンしか出てこないチョイ役にそこそこの俳優を起用する予算があるなら自然なCGを製作するべき。こういうところで観客は素に戻る。大筋はしっかりしているものの枝葉のケアが「適当」なのが垣間見え、これも残念だった。

健闘は認める。渡辺謙が試写会後に涙を流した心情も理解できる。だが、それにしてはもったいない出来であるといわざるを得ない。

(2009.11.01 109シネマズMM横浜)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)甘崎庵[*] シーチキン[*]

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