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[コメント] 白夜(2009/日)

真っ向勝負の直球メロドラマであり、しかも、近年まれにみる良質の反号泣恋愛映画である。台詞、音楽、撮影のどれをとっても陳腐にすら見えかねない定型でありながら、眞木と吉瀬の地味にリアルな存在感と、執拗な映画的反復により通俗性が撹拌、浄化されている。
ぽんしゅう

言葉で語らず画で語ることを好しとする映画概念に慣らされた身には、冒頭の出会いからの過剰な説明台詞と、情緒的音楽の洪水に呆れて思わずめげそうになる。しかし、小林政広の信念に裏打ちされたような執拗な「ふたりの話」の反復が、徐々に徐々に、まるで催眠術のように、「ふたりの話」を通俗的作りものから、リアルさをはらんだ擬似体験談へと観る者をいざないはじめる。おそらく異国という舞台効果も、少なからずあるのだろう。

思えば小林は前作『愛の予感』(07)でも、本作とは正反対の「無言と同一行動」の驚異的な反復描写で、男と女の「ふたりの話」を語ろうと試みていた。あたかも小林は「反復」という武器を手に、すでに散々語りつくされ、しかし我々の前に永遠に横たわる男と女の「ふたりの話」に真っ向勝負を挑んでいるかのようである。

この「白夜」という映画は、暗がりに浮かぶスクリーンで「影」として観ないかぎり、その良さが上手く伝わってこないだろう。おそらくTVモニターではだめだ。たいした根拠があるわけではないが、そんな気がしてならない。

(評価:★4)

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