[コメント] マイケル・ジャクソン THIS IS IT(2009/米)
90年代後半以降目立ったヒット曲も生み出せず、ゴシップのネタばかり提供する異形の怪物としか見られなくなっていた彼が、生身の人間であり、尋常ならざる才人であることを多くの人に思い知らされてくれてくれるレクイエム。
もはや言い尽くされている話ではあるが、彼の急逝が無ければ、そもそもこの映像が、自分も含めさほど彼に関心を持たなくなっていた数多の人に観られることはなかったわけで、その皮肉は嘆じるほかない。
作品としてこの映画を語るならば、これがコンサート・ツアーを一から創り上げる「メイキング」ではなく、「リハーサル」映像であることの特殊性に触れないわけにはいかない。即ち、限りなく完成品に近い半製品がすでに出来上がっており、そこに主役である彼が加わって「仕上げ」をかける、唯その瞬間を切り取った希少性。俊英ぞろいのダンサーやミュージシャンたちが本番さながらの必死さでリハーサルに挑む傍らで、彼自身はいい具合に力が抜けている。おそらくは二、三分の力で身体を動かしているにも関わらず、その流麗な身のこなしには嘆息させられる。ケニー・オルテガ(この人がまた普通のおっさん然とした風体なのがよい!)と並んで座って、楽しそうにモニターチェックしコメントする彼の姿が、なんだか一番感動的だった。
それにしても楽曲のクオリティの高さには今更ながら驚かされる。"Black or White"のギターリフには震撼したし、"Heal the World"のメッセージそのものには如何わしさを感じるものの、この映画を観て以来頭の中ではそのメロディーが回り続けていることを告白したい。
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