[コメント] カールじいさんの空飛ぶ家(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『モンスターズインク』も素晴らしい作品でしたが、この映画も素晴らしかった。スペシャルエディションでピート・ドクター監督のインタビューがあって、エンディングにまつわることなどを熱っぽく語っていましたが、これも良かった。
あこがれの冒険家が悪の立場にかわって、彼がカールを追いかけて森をさまようシーンが予定されていたんだそうですね。キューブリックの『シャイニング』のようなイメージだったんだそうです。
しかしこれだとカールの話ではなくて悪の冒険家の話になってしまうので、本編のようなラストが生み出されたとのこと。
この辺の工夫というか発想というか創造力と現実に対する心情の表し方は才能としか言いようがありませんね。
お話の全体はそれほど大げさなものでもないし、現代の孤独な老人と孤独な子供のお話として見ることもできるし、普遍的な要素はたくさん盛り込まれていても、それほどの斬新さはありません。
でもやはり見る側に何かを示すものは、その映像の中にある何かだと思うんです。
私にとってその何かとは風船。空飛ぶ風船。
子供の頃買ってもらって一日でしぼんでしまった風船。
子供に買い与えて、うっかり空に飛んでいってしまった風船。
そんな風船の思い出が凝縮されているような、見事な色合いにあふれたたくさんの風船。
煙突から突然現れたたくさんの風船に涙してしまいました。
そしてこの風船がもたらす数々のドラマ。それこそ浮いたり沈んだり。
それが思い出とともに消えてゆくさまをラストで示しています。それは妻の亡霊かもしれません。
こんな感動を与えてくれる映画はそれほどありません。
VFXをいくら駆使して現実を示しても、そこには本当の何かはありません。
この監督の才能につくづく感心してしまいました。
2010/05/04 自宅
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