[コメント] カティンの森(2007/ポーランド)
こんなにも国の美徳を信じ、腐ってゆく国の姿を憂えることのできるポーランド人に敬服せずにはいられない。われわれはこれほどに国を憂え得るであろうか?「身捨つる程の祖国は在りや?」
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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うんざりするほどのナチス・ドイツに犯された犯罪に続き、今やっとソ連の罪が重いベールの奥から姿を晒されようとしている。それは為されるべくして為された事だ。
話はいくつかの家族たちを中心に展開される。彼らの共通点はカティンの森事件に巻き込まれた将校たちを家族に持つ点である。その中で輝くのは、あるいは断罪を恐れずソ連の嘘を声高に訴える大将夫人であり、彼女の指摘を受けて新生ポーランド将校たる己の立場を恥じ自決する少佐であり、また平和の達成後もなおも、ソ連によってカティンで殺された父や兄を忘れない若者たちである。特に、「国内軍に唾せよ」と記されたポスターを破り、叔母に誓った美術学校への入学を「父はカティンで死亡」との履歴書への記述を覆されることを拒んで辞退し、若い命を散らすタデウシュ(アントニ・パブリツキ)の存在は忘れがたい。彼は逃亡しながらもそれを助けてくれた娘を映画に誘い、約束のキスをする。その刹那的な若さの輝きが、誇り高さとあいまって深い印象を残す。80代のワイダ監督にしてこの若さを描きうるということは、単なる才能ゆえではないだろう。ワイダは若き日の彼の姿を己の中にその年齢のままに生かし続けてきた…その結果であったことは間違いないことと考える。
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