[コメント] 八月の濡れた砂(1971/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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最初にお断りしておきますが、私の世代の映画ではありません。この映画が公開された当時の私はまだ幼稚園児。この映画はおろか、この時代の空気感すら分かりません。バブー(<赤ん坊すぎるだろ)。でもこの映画、うまく説明できないんですが、好きなんです。
正直、映画の出来は決して良くないと思っています。有り体に言って、下手。『修羅雪姫』でも思ったんですが、ただでさえ話が雑なのに、映画が雑。藤田敏八は映画下手。まあ、私が藤田敏八を知ったのは『ツィゴイネルワイゼン』の役者としてですけどね。いま、何か言ったかい?でも、この映画、好きなんです。
実は10年ほど前にケーブルテレビで見るともなしに見始めて、なんだか滅法面白くて最後まで見てしまったことがあります。この映画に「説明不能なエモーション」を感じたんです。『修羅雪姫』もそうだったんですが、何かこう、藤田敏八本人も意識していないうちに映画的な躍動が撮れてしまったような印象。たぶん、70年代前半の藤田敏八は何か持ってたんだと思います。
しかし今回鑑賞して、「説明不能なエモーション」の説明が出来る気がしたのです。いやまあ、当時の若者の虚無感が描かれているのナンのということはさておいて、まったく個人的な感想なんですが。たぶん私、「夏休みの終わり」感に「エモい」ものを感じるんだと思うんですよ。森田芳光『(本)噂のストリッパー』とか塚本晋也『ヒルコ/妖怪ハンター』とか。私の言う「夏休みの終わり」感って、具体的には「ひと夏の経験」感なんです。山口百恵的女性視点ではなく、「男の子」が「喪失」を経て「成長」する物語。実は、寺山修司『田園に死す』にも同じ匂いを感じるんですよね。あー、やっぱり説明不能だ。
(2022.09.01 神保町シアターにて鑑賞)
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