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[コメント] ニューヨーク、アイラブユー(2008/米=仏)

プロデューサーの映画。小さくまとまりすぎている。誰ひとり銃撃戦を撮らないなんて! とは云わないが、これだけ演出家が顔を揃えながら他を出し抜いてやろうという野心を見せる者がいないのは少し寂しい。その点から云えばシェカール・カプール篇が頭ひとつ抜けた出来だ。と見るのは安易すぎるか。
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多分にあざとくもあるが、ニューヨークに舞台を置く積極的な意義を放棄し、画面設計の段階からまるでリアリティを志向していないのがカプール篇だ。背景にオペラを聴かせながら静謐を保ち、緩慢かつ濃密な時間が流れる。また「鏡」「カーテン」「風」「階段」といった道具立てが(教科書的でもあるが)「映画」にふさわしい。シャイア・ラブーフにも瞠目する。実を云うと私は今までラブーフを大した役者だと思ったことは一度もなかったのだが、こういう芝居を易々とこなせるのなら彼の未来は明るい。

カプール篇のラブーフに限らず、ただ喋っているだけでそれなりに映画を持たせてしまえるのが「スター」であるとも改めて認識させられる。とりわけ感心したのはクリスティーナ・リッチナタリー・ポートマンイーサン・ホーク(煙草をくわえた顔はまるで若い頃のトム・ウェイツのようです。順調にいい顔になってきて嬉しいですね)。そして、ああ、イーライ・ウォラック

既に述べたようにカプール篇がやや異色であるという点を除けば、どのセグメントも可もなく不可もないとまとめられる程度に突出を持たない。一点だけ特に記せば、「車椅子少女」という着想に安住せず、あのように「樹木」を使ってみせるといったような演出の幸せがあるブレット・ラトナー篇に好感を持つ。

(評価:★3)

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